NHK大河ドラマ『どうする家康』が2023年1月8日に放送を開始します。2021年の大河ドラマは『青天を衝け』で武家政治の終わりを描きました。2022年の大河ドラマは『鎌倉殿の13人』で武家政治の始まりを描きました。2023年の大河ドラマは近世武家政治を確立した徳川家康を描きます。
『青天を衝け』と『鎌倉殿の13人』は家康と無関係な時代ですが、どちらも家康の登場が話題になりました。『青天を衝け』は「こんばんは、徳川家康です」が視聴者の度肝を抜きました。『鎌倉殿の13人』は最終回で『どうする家康』主演の松本潤さん演じる徳川家康が吾妻鏡を読んでいました。
日本の武家政権は平氏政権、鎌倉幕府、室町幕府、豊臣政権、江戸幕府と続きます。これらを西国基盤・東国基盤、商業(交易)重視・農業重視で分類すると西国基盤・商業重視、東国基盤・農業重視で以下のように分けられます。
西国基盤・商業重視:平氏政権、室町幕府、豊臣政権
東国基盤・農業重視:鎌倉幕府と江戸幕府
「鎌倉幕府こそは、室町幕府を越えて、江戸幕府へと連なっていく」(本郷和人『新・中世王権論』文藝春秋、2017年、280頁)
大河ドラマが『青天を衝け』『鎌倉殿の13人』『どうする家康』と続いたこと、全ての作品で徳川家康が出演することに意味を感じます。
第1回は「どうする桶狭間」です。嵐のシーンで始まりました。嵐であった主演の松本潤さんに相応しい始まり方です。オープニングテーマは朝ドラのような穏やかな内容です。
松平元康(後の徳川家康)は駿河で人質ながらも楽しい生活を送っていました。人質として虐げられていたとのイメージを覆します。今川義元は元康を次世代の今川家を支える有力家臣として育てようとしていました。
これを屈辱と捉えるかは松平氏の立場によります。これまで松平氏は三河を統一した戦国大名でしたが、駿河・遠江の今川義元に屈服して保護国状態になったと見られました。それ故に今川家の人質となることは屈辱です。
これに対して『どうする家康』は松平氏を三河の岡崎周辺を治める国衆と紹介します。三河一国を統一していません。『おんな城主 直虎』の井伊家のようなものです。松平氏が三河に覇を唱えようとするならば今川氏の後ろ盾が必要です。今川氏に従属することは屈辱ではなく、三河で他の国衆から一歩抜けた地位に立つために意味のあることになります。
元康と瀬名は恋愛結婚と描かれます。従来の築山殿のイメージと大きく異なります。築山殿事件の悲劇性が高まります。瀬名は元康が遊んでいた木彫りの兎を欲しがります。卯年に相応しいアイテムです。
キャッキャウフフのスイーツ大河の趣きがありますが、「重い荷を背負わせられた」と歴史好きを楽しませる台詞が出てきます。「お腹が弱い」という元康の弱点も三方ヶ原の合戦を連想します。
都会の駿府で過ごしている元康にとって三河の岡崎は魅力的に映りませんでした。家康と言えば三河であり、三河への愛着が強そうに感じます。しかし、家康は浜松城、駿府城と本拠を移しています。晩年も駿府城で過ごしました。育った地として駿府への愛着があったのでしょう。
元服して元康になる前の竹千代は今川家の人質になる前は織田家の人質でした。『どうする家康』で竹千代は信長に虐められていました。虐めながらも信長は元康に執着しているようで「待ってろよ竹千代、俺の白兎」と言います。ここでも卯年らしく兎です。
2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』の織田信長は愛に飢えた異常性がありましたが、『どうする家康』の信長も異常性を感じます。『鎌倉殿の13人』第39回「穏やかな一日」ではBL描写が話題になりましたが、『どうする家康』ではヤンデレのBL展開になるのでしょうか。築山殿事件は家康と瀬名と信長の三角関係になるのでしょうか。
近年の大河ドラマは新型コロナウイルス感染症対策で大人数な屋外ロケは抑制される中で合戦シーンをどう描くかは注目されます。『どうする家康』では大高城兵糧入れで元康ら松平勢の乗馬シーンが描かれました。しかし、馬がいかにもCGという感じで不自然さがありました。大河ドラマでは2009年の『天地人』第8回「謙信の遺言」が直江兼続の乗馬シーンで馬を映さず、音だけということがありました。
『鎌倉殿の13人』最終回「報いの時」毒殺と不作為
『鎌倉殿の13人』第39回「穏やかな一日」割れて砕けて裂けて散った恋心
『青天を衝け』第5回「栄一、揺れる」攘夷はNo Drug
『麒麟がくる』最終回「本能寺の変」