NHK大河ドラマ『どうする家康』第10回「側室をどうする!」が2023年3月12日に放送され、お葉(西郡局)が家康の側室になりました。家康には側室が何人もいました。毎回どうするとなるのでしょうか。
瀬名は築山の屋敷に住んだため、築山殿と呼ばれます。家康の居城である岡崎城に住まなかったことは夫婦関係が破綻し、別居状態であったためと考えられていました。『どうする家康』では夫婦仲は悪くなく、瀬名は民の声を聞くために里に屋敷を持ったと語ります。新しい解釈です。
お大の方は側室を持つことを提案し、瀬名も側室探しに協力します。瀬名が側室探しに協力することは21世紀人の感覚では異様です。亀の前事件を起こした北条政子に人間味を感じます。ところが、政子は悪女イメージをつけられています。『鎌倉殿の13人』は亀の前事件を描きますが、ふてぶてしい亀の前や源義経の暴走を入れることでドラマとして面白くまとめました。
『鎌倉殿の13人』の最終回で家康は吾妻鏡を読んでいました。ちょうど今回くらいの頃になります。今回も吾妻鏡を読んでいます。家康は側室をもって浮かれていますが、吾妻鏡で頼朝の人生を学んだら、側室に浮かれていられるでしょうか。
家康は第8回「三河一揆でどうする!」の回想シーンで論語を素読していました。そこには「民信無くんば立たず」と民衆の信頼が最も大事なものと書かれています。ところが、家康は今川義元からの「天下の主は誰か」の質問に答えられません。論語を理解していたら答えられる質問です。家康は読書家ですが、内容は理解していないのでしょうか。
後に瀬名は侍女の於万の方(於古茶)が家康の子を妊娠した際に於万の方を退去させました。於万の方は家臣の家で於義伊(松平秀康)を出産し、於義伊は瀬名が亡くなるまで家康に認知されませんでした。これは伝統的には瀬名の嫉妬と解釈されており、ここからすれば瀬名が側室探しに協力する『どうする家康』の展開には違和感があります。
これに対して近年は誰を側室にするかは正室の権限であり、瀬名は正室の当然の権限を行使しただけとの見方があります。『どうする家康』では、お大の方も瀬名が側室選びをすることを肯定しています。於万の方については正室が承知していたかの問題として描く可能性があります。
木下藤吉郎が家康を訪れます。藤吉郎は瀬名には愛想がよく、瀬名から好感を持たれます。しかし、家康の前では下品です。藤吉郎の下品さは同じ脚本家(古沢良太)の映画『レジェンド&バタフライ』の織田信長の家臣達の下品さに重なります。
映画『レジェンド&バタフライ』濃姫が織田信長を圧倒
お葉は次女・督姫を出産します。後に督姫は池田輝政に嫁ぎます。輝政の父と兄は小牧・長久手の戦いで家康に敗れて戦死しました。督姫と輝政の婚姻は池田家と徳川家の仲立ちとなりました。輝政は江戸時代初期には一族合わせて百万国近くになりました。
お葉と家康の子は督姫だけです。お大の方は子どもを沢山産むことを側室の目的としました。それならば督姫だけということは不自然です。お葉には実は理由がありました。お葉は最初から側室になることに消極的でした。強く嫌がっていなくても、本人が消極的なものを勧めてはいけない例です。強い拒否を言わなくても吐き気がするほど嫌なことはあります。
近年の大河ドラマはBLを描きます。『麒麟がくる』最終回で織田信長は明智光秀に「二人で茶でも飲んで暮らさないか」と言いました。『鎌倉殿の13人』第39回「穏やかな一日」は源実朝の恋心と失恋を描きました。『どうする家康』で織田信長は家康を「俺の白兎」と言います。BLがあれば百合があっても不思議ではありません。21世紀的な大河ドラマです。
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