
NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は2022年6月26日に第25回「天が望んだ男」を放送しました。源頼朝は死を意識します。源頼家に将軍職を譲り、船で唐の国に行きたいと言います。後の三代将軍・源実朝のような発言です。
一般に頼朝と実朝は似ている印象を持ちません。育ちが全く異なるため、似ていなくても不思議はないですが、今回の頼朝の台詞からは親子らしさを感じます。政子が頼家よりも実朝をかわいいと思う理由になるかもしれません。
『鎌倉殿の13人』の源頼朝は腹立たしい人物として描かれます。劇中の悲劇の多くは頼朝の責任です。Twitterでは「全部大泉のせい」がトレンドになるほどです。しかし、今回は良い人風になりました。巴に木曽義仲のことを謝罪するシーンは自己満足の遅すぎる謝罪に感じますが、北条政子や北条義時との会話は本当に良い話になりました。良い話で感動して終わりではなく、良い話になった後が危ないという展開になりました。
『鎌倉殿の13人』では源義経もとんでもない人物に描かれました。義経は平気で人を欺く倫理の欠如した人物でした。このような義経が滅ぼされても、判官贔屓にはならないだろうと思いましたが、最後は悲しませました。今のところ、比企能員は陰謀家であり、保身第一の卑怯者であり、滅ぼされても悲しみを感じることはなさそうですが、彼の死にも悲しみを感じさせる展開になるでしょうか。
逆に滅ぼされて明らかに悲しくなる存在が畠山重忠です。今回は餅を丸めることも上手という特技が加わりました。褒められても「下らないことを考えるのはよしなさい」と言う謙虚さを備えています。
頼朝の死因をどう描くかが注目されました。ただの病気や落馬ではなく、陰謀があるのだろうと観たくなります。素直に観れば素直な解釈が可能です。一方で頼朝は最後に義時から差し出された水を飲みました。和田義盛ら多くの人物は虫の知らせのようなものを感じていましたが、義時だけは平然としているように見えました。
史実では有力御家人排斥が続きます。これまでは頼朝が冷酷な決断を行い、義時は頼朝に振り回される存在と描くことができました。『麒麟がくる』の織田信長と明智光秀のような関係です。しかし、頼朝退場後は義時が冷酷な決断を行います。頼朝は冷酷ですが、どことなくユーモラスであり、そこに魅力がありました。義時はどうでしょうか。
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