(2018年6月16日、写真を替えました)
台湾では台北だけではなく、いろんな地域でブロックチェーンを活用していくような動きが現れてきていますよ~ということを、こちらの記事で書きました。
その動きもまた、台湾全島で一様ではなく、それぞれの地域でそれぞれに特色のある動きが展開されていて、ひとつひとつがとても興味深いです。
今回は台湾第三の都市、台中市で興味深い動きを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳は、ざっくりとした粗訳です。参考までにご覧ください(^^;)
・小学校の卒業証書をブロックチェーン上に保存!
・台中市はスマートシティの実現を目指している!?
・ブロックチェーンでスマートスクールを実現する!?
・学校教育への応用から社会全体へと広がっていく…かも?
台湾の大手紙「自由時報」のウェブサイトに2018年6月16日に掲載された記事によると、台中市霧峰区の光正国民小学(日本の小学校に相当)の卒業生19名に、台湾で初めてのデジタル卒業証書が交付されたそうです。
これは、台中市教育局が推進している「區塊鏈應用於智慧校園試辦計畫(ブロックチェーンサービスのスマートスクール実験計画)」の一環として実現したもので、2017年10月に「國家實驗研究院(National Applied Research Laboratories、NARLabs)」の「國家高速網路與計算中心(National Center for High-performance Computing、NCHC)」と連携して、ブロックチェーンベースのプラットフォームを構築したとのことです。
具体的には、プラットフォームにであらかじめ児童本人がパスワードを設定し、その後、学校側で紐づけをおこない、児童専用のQRコードをパソコンやスマホで読み込んでパスワードを入力すると、画面上に「デジタル卒業証書」が映し出されるというもののようです。
なお、今回は紙ベースの卒業証書も交付されたようで、「自由時報」の記事には、紙の証書とデジタル証書を並べた写真が掲載されています。
光正国小の校長先生である阮志偉さんは、今年卒業する19名の児童は「全台第一批享用此技術的「數位國民」(台湾で初めてこの技術を使った「デジタル国民」)」になったと語っています。
子どもたちや保護者の方々の反応も上々だったということで、新たな技術に対する興味関心の高さを感じることができます。
台湾で初めてのこうした取り組みが台中市で実施されたのには理由があります。
それは、台中市が「スマートシティ(智慧城市)」の実現を目指しており、そのためにブロックチェーンの導入に積極的だということです。
台湾のデジタルビジネスに関するニュースサイト「數位時代」に掲載されたこちらの記事によれば、台中市は2016年に「數位治理局籌備處」という専門部局を置いています。
そして、そのリーダーに、世界で初めての中国語サーチエンジンを開発し、サーチエンジン「蕃薯藤yam」を管理・開発する「蕃薯藤數位科技公司」を共同で創業した蕭景燈さんを登用しているようです。
この部局は、「自由時報」が報じた別の記事によれば、台中市長の林佳龍さんが以下のような意図をもって設置したもののようです。
主要因為資訊是跨單位進行,必須加強市府各機關間資訊的橫向溝通、協調、整合及業務推動,以加速落實台中智慧城市的發展願景。
(主に、情報を各部局の垣根を超えて進んでいくものなので、さらに行政内の各機関のあいだで情報を双方向的に流し、協調させ、統合し、業務を遂行していくことが必要で、それにより台中スマートシティの発展を加速させていく)
スマートシティの実現といえば、台北市とIOTAの提携ばかりがどうしても目についてしまいますが、別の記事で取り上げた高雄市や、この台中市など、それぞれの都市で積極的にその実現が目指されているようですね。
先に上げた「數位時代」の記事では、台中市が行政部門での情報の統合と共有化を実現するために、ブロックチェーンの技術を導入していると報じられています。
しかし、新たなシステムを行政機関に一気に導入するというのはなかなか難しいということのようで、テストケースとして具体的な行政事務に絞ってブロックチェーンを導入する計画が立てられたようです。
その計画のひとつが、上に挙げた「デジタル卒業証書」の発行ということなんだそうです。
また、教育専門ラジオ放送局の「国立教育廣播電台」のウェブサイトに掲載された記事によると、台中市は市内の3つの小中学校(烏日区烏日国小、霧峰区光正国小、潭子区潭秀国中)を「智慧校園(スマートスクール)」の実験校に指定し、各校に「智慧學習教室(スマートラーニングルーム)」を開設しているようです。
今回、デジタル卒業証書が発行された光正国小は、スマートスクールの実験校のひとつだったんですね。
こうした計画と同時に、台中市は「志工時間銀行區塊鏈計畫(ボランティアタイムバンクブロックチェーンプロジェクト)」という、ボランティアに報酬としてトークンを支出するシステムを構築していると動きが報じられています。
(報酬を払うって、それはボランティアなのか?ということはさておき…)
台中市では、上記3校での取り組みを経て、2020年に台中市内すべての小中学校をスマートスクールにしていく計画を立てているそうです。
「デジタル卒業証書」発行の動きは、単体で見ると小さな動きのように見えますけれど、こうした背景を理解すると、台中市の大きな計画のなかに位置づく重要な一歩であることがわかりますね。
デジタル卒業証書を発行した光正国小の校長先生・阮志偉さんは、今回の取り組みについて、小学校の卒業証書が社会的に利用される機会はあまりないが、これが中学・高校・大学へと広がっていけば、その需要は高まるだろうとコメントしています。
確かに、今回の取り組みだけを見ていれば、実際に役に立つような場面は少ないように見えるかもしれませんが、同様の取り組みをおこなう場所が広がっていけば、その可能性も大いに広がっていくことになります。
しかも、こうした取り組みは学校教育の世界にとどまるものではなく、「スマートシティ」という、より広いビジョンへとつながってイメージされています。
また、「スマートシティ」の実現は台湾内だけでイメージされているわけではなく、世界中でその実現が模索されているグローバルな課題でもあります。
今回、わずか19人に公布された「デジタル卒業証書」は、これから展開していくグローバルな技術革新の1ページに刻まれるものになるのかな…というのは、言い過ぎでもなんでもない、すぐそこにある「未来」なんだと思います。
ローカルの小さな一歩が、グローバルな大きな流れにつながっていることを、こうした取り組みのなかからも感じることができますね。
これからもブロックチェーンに関するささやかな取り組みに、地道に注目していきたいと思います!
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文中に挙げた記事も含め、台湾の地域とブロックチェーンのつながりについては、以下のような記事も書いています。
台北だけじゃない!高雄でもブロックチェーンをめぐる動きは活発です!(スマートシティ目指すの?)
台湾でブロックチェーンを使ったデジタルIDの試みが始まったようです!(観光業とICOの関係も?)
台湾のOTCBTCは「場外取引」のプラットフォームとして注目されています(あと、CEOが台北市長選に立候補とか?)
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