ブロックチェーンの特性を活かして既存のサービスをより良いものにしていこうという動きは、基本的な技術の開発とともに、実用に向けた試験運用の段階に入っているものも増えてきていますね。
台湾でも決済システムへの利用やデジタルIDの発行など、エリアやターゲットを絞った試験運用が展開されて、さまざまな検証がおこなわれています。
そうした動きのひとつとして、医療分野へのブロックチェーン導入が試験的に行われているという記事を目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
(ALISには医療関係のかたもいらっしゃるので、素人が記事にするのは恐れ多いのですが…健康うんぬんということよりも、ブロックチェーンの活用方法に的を絞って、引用元の記事に即しながらまとめていきたいと思います。また、文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までにご覧ください(^^;)
・DTCOと台北医学大学付属病院が提携
・DTCOって?
・phrOSって?
・医療サービスの充実に向けて…
デジタルガジェット系の記事を配信している「iThome」が報じた記事によると、台湾のブロックチェーンスタートアップであるDTCO(DigitalTreasuryCorporation)と台北医学大学付属病院が提携し、DTCOが開発した医療ブロックチェーンシステム「phrOS」の試験運用を開始したと2018年5月16日に発表したそうです。
今回の試験運用は、台北医学大学付属病院が持つカルテをプライベートチェーン(私有鏈)に載せて管理することによって、カルテの安全性と資料互換性を確保しようという試みで、実験結果を8月には公表するとのことです。
このiThomeの記事と、ビジネスニュースサイトの「數位時代」に掲載された関連記事を参照すると、今回の試験運用の主な目的は、ブロックチェーンの非中央集権的特徴(去中心化的特性)を利用して、資料を第三者を介することなくP2P(點對點)で直接やり取りするシステムが適切に稼働するかどうかということに加えて、中央集権的なサーバーシステムの弱点である外部攻撃・ウイルス攻撃への耐性を検証することにあるようです。
カルテ利用の利便性と安全性に関する検証を積み重ねていくということのようですね。
DTCOは「區塊客」によるCEO李亞鑫さん(JacobLee)へのインタビュー記事によると、2014年に李亞鑫さんが創業したブロックチェーンスタートアップで、「生技醫藥」(生物学的製剤、Biopharmaceuticals)、「健康醫療」(保険医療、healthmedical)、「能源市場」(資源市場、energy market)、「資産管理」の4分野に向けたサービスの提供を中心に技術開発をしているそうです。
DTCOの公式ウェブサイトによると、現在提供しているシステムは、以下の3つです。
生技新葯智財交易(生物学的新薬知財取引)「Bio IPseeds」
健康醫療區塊鏈作業系統(保険医療ブロックチェーン作業システム)「phrOS」
數位原住民計畫(デジタル先住民プロジェクト)「e-indigenous nation」
今回、台北医科大学付属病院に導入されたのは、2番目に挙がっている「phrOS」ですね。
ちなみに、3番目の「e-indigenous nation」については、台湾の離島である「蘭嶼島」に住む先住民族タオ族のデジタルIDシステムとして試験運用が始まっています。(このデジタルIDについては、こちらの記事に書きました)
こうしたシステムを通じて、「政府機関」、「金融機構」、「食品産業」、「薬品医療」、「企業・団体(企業與機構)」「IoT(物聯網)」、「スマートシティ(智慧城市)」、「市民サービス(公民個人)」といった分野へのブロックチェーンの応用を考えているようです。
ブロックチェーンの特徴を最大限に活かして、既存のサービスへの多様な応用を目指していることがうかがえますね。
「phrOS」(PersonalHealthRecordOS)は、iThomeの記事によれば、EEA(Enterprise Ethereum Alliance、以太坊聯盟)が提供しているプライベートチェーンを基盤として開発された情報管理共有システムだということです。
イーサリアムベースのシステムということで、今回の試験運用を経て正式に運用する段階になったときには、スマートコントラクト(智能合約)をフル活用したシステムの構築を目指しているようです。
「數位時代」の記事によれば、たとえば、病院・健康保険・医療開発・保険・ビッグデータ(大數據)にかかわる企業を連携させたサービスを目指していると書かれています。具体的には、カルテの共有だけではなく、保険金請求の手続きと支払いを、診療時に自動で済ませることができるようにすることなどが想定されています。
今回の試験運用でも、ブロックチェーン個人健康管理アプリ「Go-4-PHR」によって、スマートリング(智慧手環)を通じて、患者さんの心拍数や睡眠周期などをデータとして蓄積し、患者さんと病院とのあいだでデータ共有・管理が相互に可能なシステムがきちんと稼働するかということも検証されるようです。
DTCOの協賛企業には、大手保険会社である「富邦産険」が入っています。具体的なサービス実現に向けた研究が進んでいる最中なのかもしれませんね。
…ふぅ、技術的なこともまだまだ勉強中なので、なかなかまとまらない記事になってしまったかもしれません。慣れないことに手を出して文章を書くのはちょっと考えないといけませんね(^^;
でも、ブロックチェーンの応用は、こうした事例についてもちゃんと勉強しないといけないほどに進んでいるということを感じます。
DTCOの今回の取り組みは、医療システム内部のカルテ管理にとどまるものではなく、病院を中心とした医療関連のさまざまなサービスをブロックチェーンによって結び付けようという試みとして、非常に興味深いと思います。
イーサリアムの「プラットフォーム」としての機能が存分に活かされようとしているわけですが、iThomeの記事によれば、将来的には「Hyperledger」など、別のブロックチェーンプラットフォームの利用も検討されているようです。
既存のシステムをブロックチェーンプラットフォームに載せることによって、より安全に、よりスピーディーに、より便利に、サービスをバージョンアップさせていく…ブロックチェーンによって変わっていく未来の具体的な姿が垣間見えるようで、ワクワクします!
これからも勉強をつづけながら、ブロックチェーンのダイナミックな展開過程を追いかけていきたいと思います!
kazの記事一覧はこちらです。よろしくおねがいします。(下のアイコンからもご覧いただけます)https://alis.to/users/kaz
文中に挙げた記事も含め、台湾における最近のブロックチェーンの活用事例については、以下のような記事も書いています。
台湾でブロックチェーンを使ったデジタルIDの試みが始まったようです!(観光業とICOの関係も?)