以前HiÐΞさんで『ちょっと目を離すと何やり出すかわからん!っていうトピ主であり続けたい・・・』という記事を拝読し、GDP長期拡大路線が限界である理由の一つに「限界効用逓減の法則」が挙げられるということを知りました。
(そこで私はこんな記事を書きました。ご興味ある方はどうぞ)
これを「もの」の話に当てはめると「(高級品にはプレミアムとラグジュアリーがあるが)プレミアムの商品はいずれコモディティ化し、価格が下落する」ということにもなるわけです。
プレミアムはいわば高級な日用品(=より良いものを、より安く、より多くの人へ)であり、主に機能面で付加価値を付け差別化しています。
ラグジュアリーはいわば嗜好品(=良いものを、相応の価格で、価値のわかる人へ)の中の嗜好品でかつ高級化路線(意図した高級化でない路線ではマニアックな商品が該当します)のものです。
(つまり、ラグジュアリーは万人受けの必要がなく、それどころか場合によっては客が販売を断られることすらもあります。
これは「売るという目的よりも価値を落とすのを避ける方を優先する」もので、ラグジュアリーの会社は価値合理的行為の会社とも言えます。
価格も「その価値をわかるお客さんだけに買ってもらう」という姿勢なので、自らその価値があると思えば高い価格を設定することができます)
というわけで、上記リンク先の記事で以下のような図を貼っていました。
とすると「プレミアムの商品がコモディティ化しやすいのなら、コモディティ化しにくいラグジュアリーの商品を生産すれば良いじゃないかー」て話になりますけども(ラグジュアリーでもコモディティ化はあります。後述)。
確かに日本には長い長い歴史があり、素晴らしい文化もあり、勤勉で識字率の高い優秀な国民もおり……と、きりがないのでやめますが、つまり「日本はラグジュアリーの商品自体を生産する力は十分にある」ということをまず申し上げておきましょう。
しかしその商品をラグジュアリーにして簡単に売ることができるのかと言いますと、正直やばいとしか言いようがありません。
今の日本でこれができる人は非常に少数であり、事実上無理と言っても過言ではない状態なのではないでしょうか。
その理由は「哲学を始め、人文科学系の学問を軽視している」からであり、かつ「ラグジュアリーの商品を生産するためには、哲学が必要である」からです。
まず、プレミアムとラグジュアリーの決定的な違いは「付加価値なのか、本質的な価値なのか」です。
プレミアムの商品がコモディティ化する理由はまさしくここにありまして、この「付加価値の部分がコモディティ化で価値がなくなる→日用品化」ということなのです。
ラグジュアリーの例としては、以前シャネルのスーツで以下のような記事を書いたことがありました。
『第二章、高級婦人服を買う女性はアホなのか? ~高級品で、これからの生き方を学ぶ~』
『第三章、高級品の顧客対象になり得る人とは? ~高級品で、これからの生き方を学ぶ~』
有料にしちゃいまして恐縮ですが、まとめますと「シャネルのスーツはココ・シャネルの哲学をスーツにするとこうなる」という話です。
つまりシャネルのスーツの本体(=価値)は「男性から見た女性の美しさの束縛から女性を解放し、自由にする」という哲学であり、スーツ自体ではありません。
さらにこの哲学を支持した顧客に米国のキャリアウーマン達がおり、彼女らが「このスーツを愛用し積極的に社会進出し仕事をした結果、世界のGDPにも貢献した」という歴史のおまけまで付いています。
先ほど、ラグジュアリーでもコモディティ化することがあると書きましたが、それは「(哲学自体または哲学由来の)コンセプトが陳腐化し飽きられる」などの理由で起こります。
このシャネルのスーツの例で言えば「男性から見た女性の美しさの束縛から女性を解放する」というところが十分に行き届き、顧客と顧客対象者に「そんなの今の時代は当たり前だよねー」となったら陳腐化するというわけです。
というわけで結論としては、プレミアムに比べるとラグジュアリーはあらかじめ利益率を高く設定できてかつ、コモディティ化も起こりにくいということになります。
なら、ラグジュアリーの商品を生産できるようになるにはどうすれば良いのか?
その答えは、先ほどの「哲学を始め、人文科学系の学問を軽視している」の逆をすれば良いというものです。
具体的に言えば「哲学とリベラルアーツを重視し、学ぶ」ということになります。
詳細は『これからの生き方を知るには、リベラルアーツがほぼ必要。その理由は?』をお読み頂けると嬉しいのですが、その記事に貼った以下の図をご覧ください。
また、この話にご興味を持って頂いた方は、以下の記事もよろしくお願い致します。
『ラグジュアリーな商品を生み出してビジネスにしたいとき、知っておくと良い「束縛からの解放」』
ラグジュアリーの商品を生産できる実力を持つことができれば、幸福度ランキングで毎年惨敗することもなくなる、というちとオオゲサなオチの話です。笑。