大相撲の序二段の琴貫鐵(佐渡ケ嶽部屋)は新型コロナウイルス感染リスクを理由とする休場を相撲協会から拒否されたと2021年1月9日にTwitterで発表しました。「コロナに怯えながら我慢して相撲を取ると言う選択肢は選べず引退を決意しました」と述べます。
アカウント名「柳原大将(元琴貫鐵大将)」で以下のように説明します。
「今日を持って
引退することになりました。
このコロナの中、
両国まで行き相撲を取るのは
さすがに怖いので
休場したいと佐渡ケ嶽親方に伝え
協会に連絡してもらった結果
協会からコロナが怖いで
休場は無理だと言われたらしく
出るか辞めるかの
選択肢しか無く
自分の体が大事なので」
日刊スポーツの取材に対し、日本相撲協会の宮田哲次主事は、休場には診断書の提出が必要と説明したとします(「コロナ恐怖で引退琴貫鐵「休場には診断書」協会説明」日刊スポーツ2021年1月9日)。ここが硬直的です。琴貫鐵は現時点では健康ですが、感染リスクを恐れて休場を希望しています。診断書の提出が必要ということは何の回答にもなりません。
根本的な問題は昭和の精神論根性論の体質です。頑張ることを美徳とする風潮は個々人に我慢や負担を押し付け、日本社会を生き辛くします。ビジネスパーソンもテレワークや在宅勤務を希望していてもできないという悩みを抱えている人々は少なくありません。技術的にも職務内容的にも可能でも、企業が対面コミュニケーション至上主義の昭和の体質のままという問題があります。それ故に琴貫鐵の問題は共感できます。
宮田主事は8日に佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)から電話で相談があったとします。琴貫鐵の引退表明は9日です。10日が初場所開催であり、それまでにという事情がありますが、決断が早いです。昭和の対面コミュニケーション至上主義者はトラブルに対して、じっくりと話し合えば解決できるのではないかと無責任なことを言う傾向があります。しかし、立場の弱い側に粘り強い交渉を要求することは筋違いです。初期回答を誤ると取り返しのつかないことになります。
これはカネカのパタニティハラスメント事件とも重なります。カネカでは育児休暇を取得した男性社員が、職場復帰するなり転勤を言い渡され、やむを得ず退職しました。これもTwitterで告発されて炎上しました。これも昭和の感覚からは退職の決断が早いです。このため、カネカが子育て世代に優しくない企業と感じた人が大勢であるものの、告発者側に特殊な問題があるのではないか決めつける告発者攻撃も一部でなされました。
力士は共同生活をしており、感染リスクが高いものです。現実に横綱・白鵬ら多くの力士の陽性が明らかになっています。共同生活の感染リスクという点では都立高校のクラスターも運動部の遠征の影響が指摘されます。また、力士は体型的にも新型コロナウイルス感染には通常人以上に留意する必要があります。そもそも大相撲初場所の開催を強行すること自体に批判があります。それでも開催するならば、参加したくない人の選択の自由の保障が必要でしょう。
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