テレビドラマ『99.9-刑事専門弁護士 SEASON I 特別編 第四夜』が2020年6月21日に放送されました。第四夜ですが、SEASON Iの第5話です。検察組織は有罪率を上げるために検察官に自白をとらせようとします。日本の警察や検察の自白強要体質を描きます。自白強要体質はカルロス・ゴーンさんからも批判されました(林田力「カルロス・ゴーン氏レバノン出国と人質司法」ALIS 2019年12月31日)。
ドラマでは、ある事件の見込み捜査を正当化して有罪に持ち込むために別の事件の真犯人を見逃がしている疑惑が生じます。警察や検察の点数稼ぎ体質です。点数稼ぎになるならば冤罪を作り、点数稼ぎにならないならばまともな捜査もしません。冤罪を生み出すことと怠慢は方向が逆であるようで点数稼ぎ体質という共通の土台にあります。冤罪は職務熱心故の暴走ではなく、点数稼ぎ体質に過ぎません。
コメディタッチですが、司法の闇という深い社会性を描いています。コミカルに演出しながら、冤罪を生み出す日本の刑事司法の問題にメスを入れています。冤罪は誰にでも起こり得るし、一度でも自白してしまうと裁判で不利になることを伝えています。私も「#日曜劇場999」や「#刑事専門弁護士」のTwitterトレンド入りにささやかながら貢献しています。このような作品を広めることに意義を感じています。
一方で日本の刑事司法の問題点を明確に描く割には現実の弁護士の評判は絶賛一辺倒ではありません。主人公の属する斑目法律事務所が豪華過ぎて、現実の職場との落差を感じるためです。
特にパラリーガルを事実の調査に従事させる点は大きな相違です。パラリーガルを多数抱える弁護士法人もありますが、基本は書類作りです。人件費を安くするために弁護士が作成する書類をパラリーガルに作成させるブラック弁護士法人もあります。多数のパラリーガルを抱える弁護士法人は過払い金返還に特化するなど胡散臭いところも多いです。
『99.9-刑事専門弁護士』は深山弁護士の個性が突き抜けていますが、複数のパラリーガルを事実の調査に投入できることが弁護活動の強みになっています。紹介文には「事実を追求する主人公・深山と、真逆のスタンスで生きてきた利益至上主義の個性派弁護士たちが交わったとき、チームにどんな化学反応が起こるのか」とあります。まさに化学反応の物語です。
『99.9-刑事専門弁護士』はグルメ要素があります。深山弁護士は美味しい料理に「普通で美味しい」という誉め言葉を使います。最初は褒めているよりも、馬鹿にしているように聞こえました。しかし、食材の普通の味をそのまま引き出すことが美味しさです。激辛調味料など食材そのものの味を壊してしまうことは食材に失礼となります。
そして、人生が破壊される冤罪被害者にとって普通とは何よりも貴重なものです。逆に含蓄のある言葉になりました。コロナショックによって生活が大きく変わったWithコロナ時代に観ると「普通で美味しい」の味わい深さが増します。
99.9 刑事専門弁護士 SEASON I 特別編
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