テレビドラマ『99.9-刑事専門弁護士 SEASON I 特別編 第五夜』が2020年6月28日に放送されます。第五夜ですが、SEASON Iの第6話です。第5話の続きです。事実を捻じ曲げても有罪を維持しようとする検察の組織悪を描きます。
後から真相を突き止める深山大翔弁護士(松本潤)は有能です。しかし、警察や検察の捜査が雑過ぎる。今回も警察官か検察官が現場に足を運んでいれば冤罪を防げました。調書に依存する日本の司法の問題点を示します。
証言の虚偽が明らかになった後も検察は記憶違いとして有罪を維持しようとします。卑怯な人間の思惑で人生が狂わされてしまいます。個人に依存することは限界に来ています。警察や検察は情報公開と第三者監査の徹底によって、不正ができない仕組みにすることが必要です。
2020年は検察官の賭けマージャンを立件しないという検察組織の不公正が明らかになりました。政権批判に結び付けて批判したい人が少なからずいますが、政治家も関与できない検察組織の身内の論理で動いている方が民主主義国家として問題です。
深山弁護士は細かな質問をします。関係ないように見える質問でも関係するようになることがあります。人質司法の日本の警察や検察が自白を引き出すために同じ質問を繰り返すこととは対照的です。
深山弁護士は接見でも容疑者・被告人の出身地など事件と関係ないような様々な質問をしています。これは深山弁護士にとっては事実を明らかにするためですが、容疑者・被告人が自白強要に抵抗する上でも効果的です。
人質司法の日本では弁護士と接する時間よりも取り調べの警察官や検察官と接する時間の方が圧倒的に長くなります。警察官や検察官は下らない雑談をしかけることが多いです。事件の話しかしない弁護士よりも敵である警察官や検察官に親近感を持つという奇妙なことが人質司法では起こり得ます。
田中森一氏は以下のように指摘します。「外と遮断された人間は、近くにいる人間にだんだんと情が移っていくものなんですよ。時には検事が自分の良き理解者のようにすら思えてくる」(青木理『増補版 国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』角川文庫、2013年、163頁)。深山弁護士の接見は、その対策にもなります。
今回は深山弁護士や立花彩乃弁護士(榮倉奈々)がピザを食べます。立花弁護士は深山弁護士のマイ調味料を勝手に使います。何だかんだ言っても仲が良いです。深山弁護士はマイ調味料を持参し、特にイマイチな料理にマイ調味料をかけて食べます。これは深山弁護士の変人ぶりを演出します。
但し、マイ調味料はグルメ作品としてはあまり感心できません。素材そのものを味わうことにならないためです。このマイ調味料は物語の展開上、必要な設定でした。その事件が終わったSEASON IIでは目立たくなったことはグルメ作品としては邪道という認識があるためでしょう。
特別編は今回が最終回でした。特別編がSEASON IIIの下準備であることを期待します。社会にとっては残念なことですが、愛媛県警の女子大生誤認逮捕事件や賭けマージャン事件などドラマの素材は蓄積されています。
99.9 刑事専門弁護士 SEASON I 特別編
『99.9-刑事専門弁護士』松潤の榮倉呼びにゾクゾク
『99.9-刑事専門弁護士 第二夜』宮崎強姦ビデオ事件を連想
『99.9-刑事専門弁護士 第三夜』出番なし
『99.9-刑事専門弁護士 第四夜』普通で美味しい
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