日本も含め、世界各国のブロックチェーン・仮想通貨をめぐる法整備の動きは、市場自体がタイムリーかつダイナミックに動き続けていることもあって、どうした動きを注視しながら慎重かつスピード感をもって、議論が進められているように思います。
台湾でも、ブロックチェーンや仮想通貨を実際に様々なサービスや社会システムのなかに組み込もうとする急速な動きがあるなかで、既存の法体系にどのようにこうした動きを位置づけていくのかということが喫緊の課題となっています。
そうしたなかで、法整備を進める立法院(日本の国会に相当)のなかでも、ブロックチェーン・仮想通貨に関心をもつ立法委員を中心に議論が進められています。僕もこれまでにいくつかの動きを記事にしてきました。
今日は、台湾の立法院で「ブロックチェーン×金融」に関する公聴会が開催されたというニュースを目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
・ブロックチェーン業界の自主組織結成後に初めて開催
・ICOをどう位置づけるか?
・議論はグローバルに!
台湾のネットメディア「INSIDE」が伝えた記事によると、2018年5月29日に立法院内で、、5名の立法委員を中心とする「區塊鏈金融發展公聽會(ブロックチェーン金融発展公聴会)」が開催されたとのことです。
5名の立法委員とは、余宛如さん(民進党)、陳其邁さん(民進党)、姚文智さん(民進党)、鄭運鵬さん(民進党)、許毓仁さん(国民党)の5人です。
余宛如さんや許毓仁さんは、僕も以前に記事に書いたマネーロンダリング防止法の公聴会にも出席しており、先日結成された、ブロックチェーンに関する立法委員の超党派組織(TPCB)や業界自主組織(TCBSRO)の結成についても主導的な役割を果たしています。(前者の記事はこちら、後者の記事はこちらです)
台湾のブロックチェーン・仮想通貨に強い関心を持っている立法委員の方々ですね。
また、姚文智さんは昨日、台北市長選の民進党候補に決まったことが報じられていました。(フォーカス台湾の記事が日本語で読めます)
そのほか、iThomeが報じた記事によれば、公聴会の席上には、中央銀行副總裁の嚴宗大さんをはじめ、金融監督管理委員會の主任委員、弁護士、国立台湾大学や国立政治大学の研究者に加えて、MaiCoin、COBINHOOD、奥丁丁(OwlTing)などブロックチェーン・仮想通貨関連企業の人々が出席し、意見を述べていたようです。
公聴会は台湾のブロックチェーン・仮想通貨にかかわるキーパーソンが中心になって開催されているといえそうですね。
また、公聴会には、「別等沙盒,好了就上!(サンドボックスを待たなくてもいい、始めよう!)」というスローガンが書かれています。
フィンテックの発展を促すための法制的特例を設ける「レギュラトリーサンドボックス(監管沙盒)」については別の記事に書きましたが、全体的なフィンテックにかかわる議論のなかでブロックチェーンのことを取り上げるのではなく、個別テーマとして議論する必要があるということが、このスローガンには示されているように感じます。
ブロックチェーン・仮想通貨に関する関係者の意気込みが感じられますね。
今回の公聴会で具体的なテーマとなったのは、ICO(首次代幣發行)をどのように位置づけるかということだったようです。
先に挙げたiThomeの記事によれば、具体的な議論としては、ICOや仮想通貨をどのように法的にコントロールしていくか、そのためには既存の法律の枠内に置くべきか、それとも新法を制定するべきかということについて、さまざまな意見が提起されています。
とりわけ、議論が集中しているのが、ICOは果たして既存の株式発行による資金調達と同じなのかどうか、ICOで発行されるトークンが有価証券として位置づけられるのかどうかといったところのようでした。
このあたりはRippleをめぐってアメリカでも議論になったことが話題になっていましたね。このあたりの動向が踏まえられているのかもしれません。
弁護士である熊全迪さんの意見では、台湾でICOをどのように位置づけるのかということについて、所管官庁である金管會はまだ方針を明確にしておらず、仮に有価証券として位置づけるのであれば、関連する法令を定めるべきだということのようです。
これに対して、金管會の鄭貞茂さんはICOに対して、当初は台湾の株式市場である「櫃買中心」が実施している「創櫃板」という、比較的少額の資金調達方法に照らして考えるのが適当かと考えていたそうですが、検討の余地があるとのことです。
こうした現状を受けて、立法委員の余宛如さんは金管會に対して、1か月以内にICOを「創櫃板」の方法に照らして位置づけることが妥当であるかどうかを検討し、その結果を報告するよう求めたとのことです。
こうした議論には、ICOという新たな資金調達方法について、既存の法令の枠組みに照らして位置づけるべきか、それとも新たな法令を作って管理していくべきかという論点がうかがえます。
ICOに限らず、ブロックチェーンという新しい技術と、そこから生み出される仮想通貨を、どのように法体系のもとに組み込み、適切な管理をしていくかということをめぐる、大切な論点だと思います。
そのほかにも、業界自主団体(SRO)をめぐる議論や「KYC(KnowYourCustomer、客戶忠誠計畫)」に関する議論、あるいは台湾の銀行はブロックチェーンの導入に強い関心を寄せているということなので、注目すべき議論が交わされたようです。
そうした議論のなかで、許毓仁さんなどは日本や韓国の法整備の状況や、中国における仮想通貨の禁止などを踏まえた意見が提出されていたことは興味深く感じました。
ブロックチェーン・仮想通貨の法整備をめぐる議論は、世界各国が同時進行で議論を展開しています。
それぞれの国家や地域の社会状況を踏まえて、さまざまな形で法整備が進められることと思いますが、その際に参照されるのは、世界中でタイムリーに行われている議論なのだろうと感じます。
本当の意味でグローバルな議論を進めていくためには、ボーダーレスに情報や議論を参照していくことが必要になるはずです。学ぶべきことはたくさんありますが、だからこそ、学び続けることにさらなる重要な意味が生まれてくると思います。
僕自身も出来る限り、多様な情報に触れ、インプット/アウトプットしながら学んでいきたいと思います!
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最近の立法院・立法委員の動きについては、こんな記事も書いています。
台湾でブロックチェーン技術を推進する超党派組織と業界団体が発足しましたよ!