ブロックチェーンの分散型台帳システムとしての性質は、仮想通貨だけにとどまらず、データの安全性と信頼性を必要とするさまざまな分野に応用可能だといわれていますね。
台湾・香港・中国でもさまざまな分野への応用が考えられたり、実際に運用されたりしはじめています。
僕がこれまでに書いた記事のなかでも、たとえば、行政(こちらの記事など)、医療(こちらの記事など)、食品流通(こちらの記事など)などなど、挙げきれないほど広範にわたっています。
そうしたなかで、サプライチェーンへのブロックチェーンへの応用についての新しい動きに関する情報を目にしましたので、少し書き留めておきたいと思います。
(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳です。参考までに止めてご覧ください(^^;)
・Linfinityと阿里山集團が戦略的提携に合意
・ブロックチェーン・IoT・ビッグデータを活かして何をするか?
・ホワイトペーパーには?
・今回の提携で具体的に展開することは?
・「食品×ブロックチェーン」への可能性
台湾のデジタル系ニュースサイト「科技新報TechNews」は2018年6月13日付の記事で、ブロックチェーン関連企業の「Linfinity」が台湾のタバコ製造業者「阿里山集團(阿里山グループ)」との提携文書に調印したことを報じています。
今回の提携相手である阿里山集團は、「阿里山」というブランドのタバコを製造・販売しています。
特に中国・香港で多く流通しているとのことですが、こちらのウェブサイトをみると、日本も含めて世界50か国で流通しているようですね。
(ちなみに台湾でも販売しているようですが、僕は見たことないです…あ、空港の免税店に売ってたかな(^^;)
阿里山集團は今回の提携によって、製造・流通・販売から消費者に至るまでをつなぐサプライチェーンの刷新を図りたいと考えているようです。
そのために導入を検討しているのが、Linfinityが持っているブロックチェーン技術だということなんですね。
記事中、Linfinityは今回の提携を通じて、以下のようなことを実現していくことを目指すと書かれています。
Linfinity 期待這個以區塊鏈整合供應鏈系統的革命性解決方案,有效杜絕假貨橫行市場,並維護企業商譽與消費者權益。
(Linfinityはこのブロックチェーンによってサプライチェーンシステムを統合する革命的な解決方法が、ニセモノが横行するマーケットの廃絶に有効であり、企業の名誉と消費者権益を保護することを期待する)
Linfinityがブロックチェーンをサプライチェーンに応用しようとしていることがわかりますね。
ただ、実際にLinfinityの公式ウェブサイトを見てみると、以下のように、ブロックチェーン技術の開発やサプライチェーンへの応用に限らない事業展開を考えているようです。
(ちなみに、公式ウェブサイトは中国語簡体字、英語、日本語、韓国語が用意されています。
英語・日本語は同じ内容ですが、中国語は別の内容のようです。
韓国語もおそらく英語ベースかな…以下、僕の記事では中国語簡体字のサイトを参照しています。)
Linfinity以区块链、物联网和大数据技术为基础,以“万物互联,共享互信”的科技理念为主导,针对于企业用户的实际业务痛点和发展诉求而建立的数据可信、信息透明、协同高效、互联互通的可信任分布式商业平台。
(Linfinityはブロックチェーン・IoT・ビッグデータ技術を基礎として、「万物がつながり、共有で信じあう」という技術的な理念を中心に、企業ユーザーの実際の業務のウィークポイントに向き合い、求めに応じて作り上げたデータの信頼性、情報の透明性、協同の高効率性、ネットワーク性を備えた信任分散型ビジネスプラットフォームを発展させる)
公式ウェブサイトには、ブロックチェーン(区块链)、IoT(物联网)、ビッグデータ(大数据)を中心としたエコシステム(生态圈)を描いた図が示されています。
これら3つにかかわる技術の開発と企業への提供によって、サプライチェーン全般に大きな変革を起こそうというビジョンが描かれているようです。
ウェブサイトに公開されているマイルストーン(路线图)によると、Linfinityの成立は2018年第1期、ホワイトペーパー(白皮书)の公開は2018年第2期ということで、まだ創業されたばかりの企業であることがわかります。
公開されたばかりのホワイトペーパー中国語版には、「一个服务供应链的区块链应用平台(サプライチェーンのためのブロックチェーン応用プラットフォーム)」というサブタイトルが付けられています。
(ちなみに、ホワイトペーパーには英語版・日本語版・韓国語版もあります。
日本語版のサブタイトルは、「サービス供給チェーンのブロックチェー ン応用プラットフォーム」となっているなど、やや翻訳調なので読みにくいところもありますが、こちらでもだいたいの文意は取れるかと思います。)
ホワイトペーパーによれば、Linfinityはブロックチェーンの「透明性」、「拡張性」、「安全性」、「ステークホルダーの参加」、「イノベーション」といった特徴に注目し、「物流」、「食品生産」、「嗜好品生産」、「製薬」への応用を目指しているようです。
今回の阿里山集團との提携は、この「嗜好品生産」業界へのブロックチェーン技術の提供を実現しようとするものだということがわかりますね。
先に挙げた「科技新報」の記事によれば、Linfinityは今回の提携を通じて、以下のようなサービスを実現していくことを目指していくようです。
Linfinity的解決方案可有效降低假貨市場流通的可能性,此外,亦可協助供應鏈系統製造商、物流商及經銷商進行貨款清算等,有效促進供應鏈流轉,節省大量人力成本。
(Linfinityの解決方法は偽製品の市場流通の可能性を効果的に低減させ、そのほかに、サプライチェーン上の製造業、物流業、販売業のあいだでおこなわれる経費精算などをサポートし、サプライチェーンの流れを効果的に助け、多くの人的コストの節減を果たす)
具体的には、食品トレーサビリティにブロックチェーンを導入していくように、生産物の情報をブロックチェーン上に記録することによって、製品の「真正性」を確保することで偽製品の流通を防ぎ、消費者に安心・安全な製品を提供することを目指すようです。
さらに、ホワイトペーパーには「代币模型和系统架构(トークンモデルとシステム構造)」という項目もあり、ERC20ベースのトークン発行(Linfinity Token、LFT)によるトークンエコノミー構築も目指しているようです。
流通における信頼性とサプライチェーン上における決済を、ブロックチェーン上にシステムを構築することによって、包括的に実現していこうというビジョンが垣間見えますね。
Linfinityは今回の阿里山との提携を、ブロックチェーン技術を使った事業展開の重要なステップと考えているようです。
確かに、タバコは伝統的にニセモノが流通しやすい商品(「闇タバコ」という言葉があるぐらい)ですから、ブロックチェーン応用の第一歩としては重要な分野であるといえるかもしれません。
そのうえで、Linfinityは今回の提携の先に、「蔬果等多產業合作(野菜など多くの産業との協力)」を目指していると、上に挙げた記事には書かれています。
「食品×ブロックチェーン」は「食の安全性」に対する意識が強まるなかで、成長が見込まれる、注目すべき分野のひとつであるように感じます。
すでに、食品業界に対しては、僕の記事でも触れた台湾のOwlTingのように、実際のサービスとして提供をおこなっている企業もあります。
多様なサービスが展開されることによって、既存のさまざまな問題が解決に向けて動き出す様子を感じることができる分野だろうと思いますので、これからも注意深く情報を追いかけていきたいと思います!
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