ブロックチェーンをさまざまな分野に応用しようという動きは、日本も含め世界中で展開されていますね。「黎明期」をタイムリーに感じることができるというのは、幸せなことだなあと感じます。
台湾でもさまざまなサービスにブロックチェーンを取り入れようとするアイデアがいろいろと考えられていますが、そのひとつとして、ネット掲示板にブロックチェーン関連の技術を応用することで、新たな掲示板サービスを築いていこうという動きがあります。
この動き、非常に興味深く感じたので、少し書き留めておきたいと思います。(文中の日本語訳はざっくりとした粗訳なので、厳密なものではありません。参考までに止めてご覧ください(^^;)
2018年4月16日に掲載されたこの記事によれば、DLT(DistributedLedgerTechnology、分散式帳本技術)の技術開発をおこなうBiiLabsと、AIの利用促進を担っているTaiwan AI Labsが提携し、PTT.ai計画を開始したと報じられています。
…と、このように書いただけでは何のことだかサッパリわかりませんね。僕も初見では「DLTやってるところとAIやってるところが提携したのか」ぐらいしかわかりませんでした(^^;
まずは、DLTの開発をおこなっているというBiiLabsですが、こちらの記事とこちらの記事によると、IoT(InternetofThings、物聯網)の向上を目指し、DLTのなかでもTangleを基盤技術とするIOTAを利用したサービスの開発をおこなっているようです。(台湾におけるIOTAの利用については、こちらに少し記事を書きました)
特に、2025年には全世界に500億のIoT機器が設置され、毎日50兆回のアクセスがおこなわれるという予測に基づいて、トランザクションの問題を解決するために製品開発をおこなっていくことが目指されています。
具体的には、クラウド(雲瑞)サービスのブロックチェーンへの転換を目指して、Tangleにおける精算サービス、「電子透かし」(數位浮水印)の作成、製品のカスタマイゼーション(客製化)をおこなっているようです。
BiiLabsの目標は、「區塊鏈時代的紅帽(ブロックチェーン時代のRedHat)」を目指すことだと明言しているようで、意気込みの強さを感じますね。(「RedHat」はLinux創成期からのフロントランナーとして有名ですね)
他方、Taiwan AI Labsは、公式ウェブサイトによると、2017年に杜奕瑾さんが中心となって台北に結成された、民間出資のAIに関する研究調査機関という位置づけのようです。
結成時に掲載されたこの記事によると、この組織では当面、具体的な製品を作るのではなく、以下の3点に関する調査研究を進めていき、実践のための方向性を固めたうえで、製品開発へと進んでいくとされていました。
資料創新(データ刷新):大量のパーソナルデータの処理方法の解決
演算法創新(アルゴリズム刷新):Aiアルゴリズムの開発
用戶體驗創新(ユーザーエクスペリエンス刷新):ハードウェアからソフトウェアへの思考の転換
杜奕瑾さんは、以上の3点からスタートし、少しずつAIの製品化へと進めていくための人材育成プラットフォームとしてTaiwan AI Labsを作ったとして、台湾の優秀な人材を台湾に引き留めていきたいと宣言しています。
台湾におけるAI産業の発展を展望していることがわかりますが、この杜さんがまさに、今回の計画であるPTTに大きくかかわっているんです。
今回のBiiLabsとTaiwan AI Labsとの提携によって目指されるPTT.aiというのは、PTTというサービスを前提としています。
PTT(批踢踢)は正式名称を「批踢踢實業坊」といい、いくつかのサービスを提供しています。そのなかでもっとも有名なサービスが「PttBBS」という掲示板です。
實業坊の公式ウェブサイトによれば、現在、この掲示板では100万人のユーザーがおり、ピークの時間帯には15万人のアクティブユーザーが同時に活動していて、毎日数万のスレッドが立ち上げられているとあります。
サービス開始は1995年という老舗サイトで、台湾における代表的な掲示板サイトだと位置づけられています。日本の掲示板サイトと同じく、このサイトから生まれた流行語も多数あるようです。
そして、1995年にこのサービスを作ったのが、当時は国立台湾大学の学生だった杜奕瑾さんなんです!ここで、今までの話がやっと繋がるんですね(^^;フウ…
冒頭に挙げた記事によると、PTT.aiはDLTを導入することによって、PTT BSSを「升級為去中心化的新一代分散式社群媒體平台(DistributedSocialMedia)(脱中央集権化された、次世代の分散型ソーシャルメディアプラットフォーム)」を目指すと書かれています。
「分散型ソーシャルメディア」!?もしかしたら、ALISの目指すところに近いのかもしれません。
実際に、記事には、今後、newPTTCoinを発行することによって、プラットフォーム内で形成される経済圏というものを想定しているようですし、広告モデルに依存しないことによって、記事の中立性を担保しうるという点が強調されています。
ただ、ALISと違うのは、ソーシャルメディアを一から作っていくのではなく、既存の掲示板をベースとして、次世代的な機能の拡大を目指しているというところだと思います。
既に形成されているソーシャルメディアの脱中央集権化とサーバー管理にともなう問題の克服と、さらなるメディアの自由化・民主化を、DLTの導入によって実現することを目指しているようです。
すでに数十万単位のユーザーがいて、20年を超える稼働期間を持つ掲示板に最新技術が導入されることによって、どのような変化が起こるのか。これは、新しいサービスとして立ち上げられるALISとは、また違うワクワク感がありますね。
ソーシャルメディアへのブロックチェーン技術の導入は、世界各国で様々な形で試みられていて非常に興味深いです。そこにはサービスによる共通点と相違点があり、全体として、さまざまなメリット・デメリットが検証されているようで、世界的な実験に立ち会っている感じがしますね。
僕もユーザーのひとりとして、いろんな経験をしながらこの実験に積極的に立ち会っていきたいと思います!
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台湾・中華圏のブロックチェーン利用の事例については、以下のような記事も書いています。
台湾の銀行もブロックチェーンを取り入れようと動き出しているようです!
ALISに近い?中華圏を席巻?Mattersはコンテンツプラットフォームへの仮想通貨導入を目指しています
台湾エンタメ界にもブロックチェーンの導入が始まっていますよ(著作権管理に活用?)