(写真はイメージです。念のため(^^;)
海外との貿易業務は、信用状やインボイスなどを通じて確実に品物を届けるための事務的な作業が、まだまだ紙ベースでおこなわれているという記事をよく目にします。
(たとえば、ロイター日本語版のこちらの記事)
信用・信頼を間違いなく担保するということがその大きな理由だと思うのですが、こうした分野にこそ、ブロックチェーンを活用する余地が大いにありますよね。
日本も含め、世界各国でそうした技術開発の動きが展開されているようですが、台湾でも海運業における貿易業務をブロックチェーンで効率化させる動きが概念実証のレベルまで至っているようです。
この実証実験にかかわっている企業はいずれも、台湾でそれぞれに特徴のある企業ですので、少し書き留めておきたいと思います。
・中信商銀・陽明海運・奇美実業が国際貿易の貿易プロセスを実施
・中信商銀はブロックチェーン導入に積極的!
・大手企業同士の連携は影響力が大きい?
・地道な検証が世界を変えていく…かも?
台湾の「中國時報」系列の経済紙「工商時報」が2018年6月11日付で伝えた記事によると…
今年4月に台湾の大手銀行である「中國信託商業銀行」と、海運業大手の「陽明海運」、そして化学製品開発などを中心とする大手メーカーの「奇美實業」の三者が提携する形で、ブロックチェーンを用いた国際貿易システムの概念実証(Proof of Concept、PoC、概念驗證)を完了したということです。
記事のなかには中信商銀のコメントが掲載されていましたが、冒頭にも書きましたように、現在の国際貿易が紙ベースでおこなわれていると述べられています。
そして、紙ベースであるために人的な労力と時間が多く消費されるうえに、紛失や偽造のリスクが大きいことが指摘されています。
こうしたリスクを解消するためにブロックチェーンを導入し、その技術的な特性を活かして海運・貿易融資のプロセスのスピードアップを実現することができるようです。
今回のPoCでは、中信商銀が輸出入企業への貿易融資を、陽明海運は海運業務を提供し、陽明海運の顧客であり流通の価値創造(創新價值)に強い関心を示していた奇美実業を加え、台湾から東南アジアへの輸出流通プロセスを実施し、一定の結果を得たようです。
今回のPoCは台湾で初めてのケースだったとのことで、中信商銀はこれからのブロックチェーン関連商品提供の足掛かりにしていきたいという思惑もあるようです。
中信商銀は台湾のなかでも、ブロックチェーンに関心の強い銀行のひとつとして有名です。
中信商銀の親会社である中信金控(中信ホールディングス)の取り組みについてはこちらの記事に書きました。
「工商時報」の記事にも2016年に「ブロックチェーンラボ(區塊鏈實驗室)」を開設していることや、
今年2018年1月に「KKFARM(科科農場)」と共同でブロックチェーン上に構築した音楽コンテンツの著作権保護に関するプラットフォームを公開したことが取り上げられています。
KKFARMの取り組みについても、こちらの記事に書きました。
「SoundScape在田」という「デジタルミュージック提供プラットフォーム(數位音樂發行平台)」を提供し、著作権管理をコンテンツ創作者自身が管理できるような仕組みを、すでに製品化させています。
中信商銀は自らの業務にブロックチェーンを組み込むことによって、金融業務の効率化を進めると同時に、ブロックチェーン関連分野への技術提供や製品開発にも積極的にかかわっているようです。
金融機関が積極的にブロックチェーンにかかわっていくと、さまざまなサービスが花開いていくんだというような期待を感じさせるほど、積極的な動きを展開していますね!
中信商銀は台湾の銀行のなかでも最大手に近い有力銀行ですが、今回の提携相手である陽明海運と奇美実業も、それぞれの業界をリードする企業です。
陽明海運は台湾の「三大海運(陽明海運、長榮海運、萬海海運)」として挙げられる大手企業です。
公式ウェブサイトによれば会社の創業は1972年ですが、wikipedia繁体字版の項目記事によれば、1873年に上海で創設された中国で初めての民間海運企業である「輪船招商公局」を前身としているようです。
奇美実業は化学製品、特にABSのメーカーとして世界的に有名な企業で、1960年に会社を創設した創設者の許文龍さんの政治的・経済的・社会的な発言が注目されることも多いです。
台南市郊外にある「奇美博物館」の壮大さといったら、一企業が創ったとは思えないほどの規模と存在感です。
どちらの企業も日本も含む世界中に支社を開設し、グローバルに事業展開しています。
こうした企業がブロックチェーンを導入し、実際に業務の効率化を実現していくことは、台湾だけにとどまらない影響力を発揮するのではないかなと感じています。
今回取り上げたニュースは、単体のものとしてはそれほど大きな動きがあったわけではありません。
でも、このニュースがブロックチェーン導入に積極的な企業であったり、世界的に事業を展開している台湾を代表する企業の動きとして報じられたところに、大きなニュースバリューがあるように思います。
こうした企業がブロックチェーンの活用に向けた検証を積み重ねていっているということは、これらの企業や業界で近い将来、ブロックチェーンを使ったサービスが実現されていくんだという、その確かな足取りを感じることができます。
こうした新たな技術が発展・普及していくためには、スタートアップなどの動きが大切だということは言うまでもありませんが、同時に、すでに世界中で事業展開をしている企業が積極的にかかわっていくことも大切な要素だと思います。
このような動きがもっといろんなところで展開されることを願いながら、そうした動きをコツコツとキャッチしていきたいと思います!
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文中に挙げた記事以外に、台湾の銀行のブロックチェーンに関する取り組みについては、以下のような記事も書いています。
台湾でブロックチェーンを使った決済システムの試験運用が始まったようですよ!
台湾の銀行もブロックチェーンを取り入れようと動き出しているようです!
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