前回の記事で紹介したジャングルガールが描いた絵を紹介します。
9日間の短い失踪の後に森から戻た後に急に描き始めた絵。
数日経つと描くことを一切やめてしまいました。
彼女のお父さん役ローさんからカレンダーの裏なんかに描いた絵をもらったのですが、ほとんどが雨漏りで泥だらけになっていました。
その中に少しだけまだ汚れていない絵がありました。
人の絵のようですが下半身は空間に溶け込んでいるような人たちが書かれていました。
次の絵は彼女がジャングルで生活していた時の様子を暗示している気がしました。
右から二人目の人の左手首にヒモのようなものがまかれています。
そして実際のロチョムの左手首には傷があります。
彼女は何らかの理由でジャングルに監禁されていたのだと想像されます。
カンボジアはかつてクメール・ルージュと呼ばれるポル・ポト率いる共産党が政権を握っていました。
1979にその政権は崩壊していますが、その後ポル・ポト派と呼ばれている共産党の残党はカンボジア各地の森に潜んでゲリラ戦を展開しました。
ラタナキリの森にも近年までポル・ポトの残党が潜んでいたと言われていて、ロチョムは彼らに監禁されていた可能性もあります。
心が壊れてしまって肉体と分離したようなそんなイメージの絵です。
とても悲しい現実を表す絵だと思います。
裸になって四つん這いで歩き、言葉も話すことはできません。一見人間らしさを失ってしまったようなロチョムですが、最後の理性を振り絞ってこの絵を描いて、何かを訴えようとしていたのかもしれません。
三枚目の絵からは心の暗闇の奥に潜む彼女の本質のようなものを感じました。
とても優しいようにも見えるし、恐ろしいくらいの冷たさを感じたりもします。
今後彼女は、辛い体験のせいで内側に封じ込められてしまった様々な要素を統合していく必要があるのだと思います。
彼女の存在は、人間の心がいかに脆いものか、そしてそれを守るためにどのように防衛することができるのか、そんなことを考えさせられました。
絵を描いていたのはわずか数日の間だけで、なぜかその後は一切書かなくなったそうです。
ですが将来彼女の中で一定の安心感が得られた時に、また絵を描き始める可能性もある気がします。
その時彼女は大きく変化していく気がしました。
当時の自分はローさん一家と仲良くなり、一家と一緒に彼女の状態を気にかけていました。
そんな時ローさんは、ベトナムに住んでいるジャライ族の魔術師ならロチョムを救えるかもしれないと言いました。
そして成り行きと好奇心でその魔術師に会いにいくことになりました。
次回はその時の様子を紹介します。
参考
ロチョム・プニン (wikipedia)
2年くらい前に、『世界の何だこれ!?ミステリー』という番組で彼女のことが紹介されたそうです。[→番組概要]
これまでジャライ族について紹介した記事です🐱