安全性も含めて、とかく注目を集める仮想通貨取引所ですが、DEX(去中心化交易平台)も含めて、仮想通貨の取引や流通には、取引所の存在というのは欠かすことができません。
日本ではコインチェックのNEM流出事件を受ける形で、業界内の自主管理組織が結成される動きも見られますが、こうした動きは世界各国で起きています。たとえば、台湾でも新たな動きがあったことを前回の記事にまとめました。
また、こうした取り組みはそれぞれの国や地域のなかだけで展開されるものではなく、グローバルに連携する組織を結成しようという動きも現れてきているようです。今日はそうした動きに関する記事が目についたので、少し書き留めておきたいと思います。
香港の仮想通貨取引所である「Coinsuper(幣成)」が2018年5月21日に公表したプレスリリースによると、Coinsuperは同日に東京で開催されていた「FinwiseSummit(纷智区块链峰会)」において、「加密貨幣交易所聯盟(Crypto Exchange Network、CEN)」の結成を推し進めていくことを公表したと伝えられています。
このプレスリリースについては、英語版がJCNニュースワイヤー発信のこちらのサイトからも見ることができます。
Coinsuperは香港発の仮想通貨取引所で、公式ウェブサイトによれば通常の仮想通貨取引(幣幣交易)と合わせて、OTC取引(場外交易)もおこなっているようです。台湾のOTCBTCについての記事でも書きましたが、こちらにもOTC取引を通じて中国からの取引が増えているのかなあと想像します。
また、Coinsuperは現在、2017年にシンガポールで創業されたHiggsBlockTechnologyという、ブロックチェーン技術の開発をおこなう会社の子会社となっていて、FinwiseSummitでの発表は、このHiggsBlockのCEO(首席執行官)である鄧柯(Karen Chen、邓柯)さんがおこなったようです。
Higgs Blockという会社は、公式ウェブサイトを見ると、独自のブロックチェーン技術を応用して、レギュラトリー・サンドボックス(RegulatorySandbox、監管沙盒)やスマートカーチェーン(SmartCarChain、智能车链)といったソリューションを展開しており、なかなか面白そうな会社です。
なお、「FinwiseSummit」というのは、公式ウェブサイトによれば、フィンテック(金融技術)の業者間の交流と情報交換を目的とした会議で、2018年5月21日・22日に東京・品川で開催されていたようですね。
2017年から開催されているようで、今年は1月のマカオから始まり、今回の東京を経て、ロサンゼルス(6月)、香港(8月)、ドバイ(10月)、バンコク(12月)と開催が続いていくようです。
これまでの大会では共催者にBinanceが入っていましたし、東京大会では協賛者にHuobiやOKEXなど、著名な取引所も名を連ねていますから、世界の取引所の人々のあいだで盛んな交流が行われていたようです。
ちなみに、今回の東京大会の「メディア協賛」にはNHKも入っていますが、報道されているんでしょうか…(^^;
CENの結成を公表した鄧柯さんの説明によれば、CENの結成によって、従来の金融業者や公的機関および仮想通貨交換業者が連携して、安全性の向上と製品開発を推進していくことによって、仮想通貨市場をさらに拡大していくことが期待できるとのことです。
具体的には、以下の5つの効果が期待できると指摘しています。
1.組織協調各大交易所(大手取引所の連携の組織化)
2.保護客戶利益(ユーザー利益の保護)
3.行業自律(業界のセルフコントロール)
4.減小風險(リスクの軽減)
5.發展更多的商業機會,實現雙贏(ビジネスチャンスの更なる拡大とwin-winの実現)
そして、Coinsuperがこの組織の「代理人(agent)」として組織コーディネートの中核を担っていくとしています。
仮想通貨取引所をめぐるさまざまな課題に対して、国や地域単位で対応していくのではなく、グローバルに対応をしていく必要があるという切迫した思いをうかがうことができるように思います。
と同時に、その主導権を握っていこうという思惑も垣間見えるように感じました。
仮想通貨市場はもとより、その基盤となっているブロックチェーン技術も、その「非中央集権」的性質を考えれば、その可能性も、その危険性も、ひとつの国家・ひとつの地域におさまるようなものではなく、グローバルに展開していくことが宿命であるように感じます。
そうであれば、国内での独自の取り組みというのが大切なのはもちろんですが、国際的に連携しながら、市場全体、または技術全体の可能性と危険性について、協議しつつ対応していくことが必要なのかなと思います。
そうした取り組みの具体的な表れのひとつが、今回の動きなのかなと感じますので、こうした取り組みの広がり、展開の様子をこれからも追いかけていきたいと思います!
kazの記事一覧はこちらです。よろしくおねがいします。(下のアイコンからもご覧いただけます)https://alis.to/users/kaz
香港や国際的な仮想通貨・ブロックチェーンの動向については、こんな記事も書いています。
ALISに近い?中華圏を席巻?Mattersはコンテンツプラットフォームへの仮想通貨導入を目指しています