ジャングルガールを何回か訪問するうちに、彼女の世話役のローさん一家と仲良くなりました。
あるときローさんは、ベトナムに住んでいるジャライ族の魔術師のことを教えてくれました。
その魔術師は、様々な人の悩みを聞いて魔術を使って解決しているそうです。
彼に魔術の儀式をやってもらえれば、ロチョムを普通の生活ができるように助けてくれるかもしれないと言うのです。
魔術師には、気に入らない人に呪いをかけて病気にしたり不幸をもたらす役割の黒魔術師。
反対に、人々の不幸や悩みを解決する白魔術師がいるそうです。
ローさんが知っているその魔術師は白魔術師だそうです。
後日その魔術師に会いに行くことになりました。
ローさんの息子が車を出してくれました。
彼はちょうどカンボジアーベトナムの国境警察をしていたので、パスポートを持っていないローさんもベトナム側に行けることになりました。
本来ならロチョム本人が魔術師に会うべきなのですが、長時間の車移動が難しいということで、彼女は連れていかないことになりました。
その代わり彼女の写真と服を持って行くことにしました。
出発の前日まで雨が降っていて、国境地帯まで行く途中の森で車がぬかるみにはまってしまい身動きが取れなくなってしまいました。
絶望的な気分になったのですが、幸い近くにジャライ族の村があり、村人15人くらいにきてもらって車を引っ張り出してもらいました。
その後なんとか国境を越えて、さらに一時間半ほど車を走らせたところに魔術師が住んでいるジャライの村がありました。
ベトナムのジャライ族の村の方がカンボジア側よりも近代化が進んでいる印象です。
その村の中に魔術師の家がありました。
独特の形をした屋根が印象的でした。
家に行くとすぐに魔術師さんが出てきましたが、軍服を着ていて驚きました。
彼はベトナム軍で働く一方、副業で魔術師をやっているのだそうです。
対照的な正業と副業の組み合わせです。
写真を撮ろうとしたのですが、彼の職業柄、写真は撮らないでほしいと断られてしまいました。
家の中に入って、今回訪問した理由などを説明しました。
そして彼の身の上話を色々としてくれました。
その後場所を移動しました。
印象的な家の屋根裏の部分が隠し部屋になっていて、そこが魔術専用の部屋になっていました。
ジャライ族の家は伝統的に木材と竹だけでできているのですが、隠し部屋はコンクリートで囲われていました。
ハシゴの登って狭い入り口を通ってその部屋に入ります。
魔術師が色々と道具を準備して儀式が始まりました。
謎の記号や模様がいっぱい書かれているノートを見ながら儀式をします。
そのノートには彼が行う魔術の全てが書かれているそうです。
魔術というのは、それに関わる人たちが同じ世界観を共有することによって成り立っています。
魔術やそれに伴う色々な物語を共有する人たちにとっては、魔術師の存在はとてもリアルな現実です。
日本人もいろんな価値観や常識をいつのまにか共有しながら日々を生きています。
かつてのジャライ族の人から見れば、当たり前のようにお金に代表される近代社会の様々なものに価値があると信じている日本人は、とても不思議な存在に映ったのかもしれません。
それは私たちが魔術師を見るのと同じような感覚なのだと思います。
そんなことを感じながら魔術の儀式を眺めていました。
次回は実際の儀式の様子をリポートします😊
参考
ロチョム・プニン (wikipedia)
2年くらい前に、『世界の何だこれ!?ミステリー』という番組で彼女のことが紹介されたそうです。[→番組概要]
これまでジャライ族について紹介した記事です🐱